「高周波の音を聞き続けることで、英語が聞き取れるようになる教材CD」が結構PRされています。これらは、「日本語より英語のほうが周波数が高い。だから日本人は英語が聴き取れない。」と言っています。
主張の一例ですが
日本語の周波数は 150~1,500 Hz
英語の周波数は 2,000~12,000 Hz
英語を習得するためには、リスニング力をつけ、そして正しい発音を身につけるために不可欠だと思います。
しかし、高周波教材については疑問があります。
日本人が日本語を発する音の周波数が英語より低いからといって、こんなに極端に違うのでしょうか?
その辺りも含めて、調べてみました。
知識以前に必要なのは、耳のトレーニング?
リスニング時間を増やし、耳を慣らすこと?
これは自分で勉強しているときに自分の発音やしゃべっているスピードは、客観的にわかりにくいですよね。また、ネイティブがしゃべっている音との違いも客観的にわからないですね。そして、このギャップはいくら勉強をして知識を詰め込んでも埋まりません。
そのため、いろんな主張があり、下記のような意見がまかり通っています。
・日本人が英語を聞き取れないのは英語の周波数帯が日本語よりかなり高い音域であるため
・子どもの頃は聞き取れていた高い音域は大人になると雑音として処理される
日本語の最高周波数が1500ヘルツであるのに対し、英語の最低周波数は、最低でも2000ヘルツなので、周波数に関しては、日本語と英語では交わるところがありません。
ヨーロッパ人など他の民族に比べて日本人が英語に弱い理由は日本語の周波数にあったのです。短期間繰り返しリスニングパワーを聴くと、子供のころから眠っていたヒアリング能力が目覚めます。 引用:リスニングパワー公式サイト http://listeningpower-official.com |
「聴覚」として、人間の可聴領域は20Hz~20,000Hzと言われているわけですから、12000Hzなら聞こえて当然なわけです。
ですが、いくら高周波だと言ってもモスキート音と言語を同じ土俵に上げて、「聞き取れる、聞き取れない」というのも強引な話です。
どの企業さんも自分の教材を他社よりよく見せるために誇大表現をしてまでキャッチコピー合戦をしているわけですから、自分の教材をより良く書くのは当たり前ですよね。
日本人が英語を聞き取れないのは周波数のせい?
もうすこし、学術的な観点から、こんな事実があるのだという例があります。
ロンドン大学やNTTコミュニケーションズなどの共同研究によると、日本語と英語では音の周波数が違い、日本語は1500ヘルツ以下なのに対し、英語は2000ヘルツ以上を使っています。
例えば、アナログ時代には、TVの時報をよく耳にしたと思います。最初の「ピッ」という音は440ヘルツ、「ポーン」という音は880ヘルツですので、440ヘルツの音の違いでもあれだけの音域の差が出ます。
”日本語の周波数に慣れている日本人の耳は2000ヘルツ以上の周波数を「雑音」として処理するようにできています。”
”周波数の違う言語を意味のある言葉として捉えられるようになるまでには、まず耳が英語の周波数に慣れる必要があります。これは150キロ近い球を打つために野球選手たちが動体視力を鍛えるのと同じで、知識や技術以前に身体をトレーニングする必要がある。”
ロンドン大学やNTTコミュニケーションズのような有名なところが、言うのだから間違いないと受け取るのは当たり前ですよね。学者であってもいろんな説があるので、有名なところが主張したからそれが、真実であるかは?です。
耳のトレーニング
リスニング時間を増やし、耳を慣らすこと?
ここで日本人とアメリカ人の標準的な発音ということで、それぞれの国のニュースキャスターのしゃべっている音を10秒間、周波数解析をしてみました。左の縦軸が周波数を表し、ここでは10,000Hzのスケールで、濃淡が音の強さを表しています。
日本のキャスター音声解析(10秒間) |
アメリカのキャスター音声解析(10秒間) |
ここで、2つの比較を見ると、上記にも書いましたが、聞くだけだ大丈夫という商材が言っている
日本語 150~1,500 Hz
英語 2,000~12,000 Hz
の差があるようには、見えないですよね。
これには騙しがあって、少し専門的になるのですが、日本語の母音は低いですが、母音を特徴付ける音のピーク周波数は、フォルマント1とフォルマント2という成分があります。
あ、い、う、え、おをいう母音によってこのフォルマント1、2の周波数は変わっていますが。母音であっても、このフォルマント2の成分は2,000Hzを超えています。
上記の図で見ると、確かに、低い周波数帯に関して出現する頻度は高いですよね。しかし、日本語でも、高い周波数成分はあるのです。
この違いはなんだろう?
日本語と、英語の音の組み合わせが異なります。
日本語の場合、
日本語=子音+母音
日本語は1つの文字が母音と子音がセット
例:わたしはおろかものです [私は愚か者です]
Wa(ア) Ta(ア) Shi(イ) Wa(ア)
o(オ) Ro(オ) Ka(ア) Mo(オ) No(オ)
De(エ) Su(ウ).
英語=子音の比率が多い(一説には7割)
英語では逆に母音+子音という構成
たとえば、egg(卵)
本来の英語は「エ」の音が強く「グ」の一瞬、息を止めて、
破裂させて音を出す。
カタカナ発音になってしまうと、「エ」の音は強く言えたとしても「グ」の音をはっきりと発音し、「グ」の母音である「ウ」の音もしっかり発音する
これが英語と大きく異なり、伝わらない要因
→単語を覚えるために、カタカナふりはNG
母音と子音の違い
音声学的に言うと、母音と子音の違いを説明すると
息の通り道を、完全にも部分的にも、瞬間的にも閉鎖しない
→母音
口の開き方や下の位置でいうと
舌の高さ(口の開き)
⇒高(high), 中(mid), 低(low)
舌の高まる位置
⇒前方(front), 中央(center), 後方(back)
唇の丸み
⇒円唇(round), 非円唇(unround)
音声学的に、母音と子音の違いを説明すると
息の通り道を、完全にも部分的にも、瞬間的にも閉鎖する
→子音
音の作りを区分すると、
1.有声・無声
2.調音位置
3.調音様式
妨げの作られ方(タイプ)
・阻害(強い妨げ):閉鎖、摩擦、破擦
・共鳴(弱い妨げ) :鼻音、流音
ここで、子音の音の特徴は、
摩擦音、破裂音等、息の流速が早く、母音より音が高く、数千Hz〜1万Hz以上になります。
英語は子音がポイント
先ほども言いましたように、カタカナ発音になってしまうと、「エ」の音は強く言えたとしても「グ」の音をはっきりと発音し、「グ」の子音が、「ウ」の音もしっかり発音するために、かき消されてしまっているのです。
これが英語と大きく異なり、伝わらない要因
ですので、子音でいうと英語の中に7割が存在しているそうです。
この表にある、赤で囲んだ破裂音、摩擦音、破砕音はさらに、子音の75%占めています。
この3つを制すると、英語らしい発音を制することができます。
ポイントは、
①下で息をせき止める破裂させる
②休符を置く
この二つです。
聞き取れないのは意識のせいだと
今回の説明で、確かに周波数成分の違いということもありますが、子音の音が理解できていないことが最大の理由だと思います。
どの高周波の音を聴かせるだけの英語学習教材も自分たちの教材を他社よりよく見せるために誇大表現というのが、よくわかりましたね。
キャッチコピー合戦をしているわけですから、自分の教材をより良く書くのは当たり前だと思うのですが、私たちは、本当にそうか、よく考えて教材を選定しなければいけませんよね。
英語は頭ではなく、身体で習得する
例えば、ダンスの動きをひとつひとつ覚え、体のどの部分をどう動かせばそうなるかを完璧にわかっているからといって、実際にそのダンスをパーフェクトに踊れるのでしょうか?
これは先ほどの「文字になるとわかるのに、なぜか聞き取れない」という状態に似ています。原理や理屈は理解しているのに、身体が対応できていない状態です。
”ながら学習”がカギではありません
耳を英語の子音の周波数に慣らすには、とにかく英語をたくさん聞くことではありません。その子音を認識できるようにする、それが一番です。人間の聴覚能力は20-20,000Hzですので、能力的に備わっているので、あとは、意識です。
一番効果的なのは、「ながら学習”を取り入れていくこと!」と考えるのではなく、音を意識するために、英語で流された音を真似するのが一番いいんです。
どんなもので練習すればいいの?
以前の記事にこの辺りは、もう少し詳しく書いたので、ご参考にしてください。
いかがでしたか?
まず耳から鍛えておくためには、発音する際に自分が正しい音を発しているかどうかを判別することが、ヒアリング力アップになるのですね。
よくモノマネ上手な人は耳が良いと言われますが、まさにその通りです。
コメント
こんばんわ!英語を話せるようになるには耳のトレーニングをして英語特有の周波数に慣れさせる必要があるのですね!参考になりました。